特別支援の不思議な世界

高校教師だった私が特別支援学校勤務をきっかけに知ったこと考えたこと

数の認識を育てる

 私のように、高校から異動してきた、しかも文系の教師にとって、数の概念が育っていない生徒にそれを教えるのは難しい。本に書かれていることや、元小学校教諭で特別支援学級の経験もある妻からの助言を参考にして、いわば見よう見まねでやってみた。相手は二語文程度は話せる生徒だったが、数の概念は育っていなかった。もっといいやり方があったら知りたいと思う。

 同形・同色の具体物(私の場合は100円ショップで買ったミニコーンだ)を使って、生徒の手を取って触らせながら、生徒と一緒に「1,2,3」と数えていった。数える数は5つ以内にした。数える終わるたびに「3までだから3個」などと言って、生徒にも繰り返えさせた。だんだん「3までだから・・・?」と問いかけ、「3個」とうまく答えられたら、思いっきり称賛した。笑顔で思いっきりだ。

 次に、慣れてきたら、手をはなして生徒一人でミニコーンを触らせた。数は私も一緒に数えた。できるようになり軌道にのってきたと思ったら、今度はミニコーンを指さしながら、生徒には目で追わせ、一緒に「1,2,3」と数えていった。問いかけや称賛は同じだ。なかなかうまくいかなければ、一段階前のことをもう少し続けてみる。

 具体物(ミニコーン)を同形・同色にしたのは、形や色が異なるものを混ぜてしまうと、数を判断するために、色や形という情報を無視するという知的操作が必要となってしまうからだ。1年間の時間切れで、やってみたのはここまでだ。さらに発展させるのであれば、異なる色を混ぜたり、異なる形を混ぜたりすることが考えられが、ここからは意外と難しいと思う。

 根気よくやることが必要だった。もしかしたらもっと効率のいいやり方があるのかもしれない。素人の浅知恵である。

 わずか「5」までだが、日常生活の中で、「〇〇君、そこの〇〇を3つ持ってきてね」などと頼まれて持ってこれれば、役に立つ。ありがとうといわれる喜びもある。自己肯定感・有用感も高まる。活動を通したコミュニケーションもできる。1つのことができることで、いろいろなものの育ちにつながっていくかもしれない。

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