学習障害(LD)を理解するためのメモである。高校現場での利用に資するため、岩波明『発達障害の子どもたちは世界をどう見ているのか』(SB新書:2023)によって、学習障害(LD)への対処法の概要をまとめておく。
実際には、学習障害(LD)は一人一人の様態が異なるため、「読む」「書く」「計算する」という行為をそれぞれ細かいプロセスに分解して、《そのプロセスのどこでつまずいているのか》《そのとき子供にとって「世界」がどんなふうに見えているのか》を分析することが重要だという。そのため、障害のある当事者から正確にヒアリングして、対処法を検討する必要がある。
以下、同書に掲載されている対処例をメモしておく。
《読むのが苦手な人への対処法》
- 読みやすくする工夫(文字を拡大する、ルビを振る、行間をあける、背景の色を変える、書体を変える、間違えやすい文字にマーカーで色付けするなど)。
- 読み飛ばしをなくす工夫(指でなぞりながら読む、しおりや定規をあてながら読む、鉛筆や定規ですでに読んだ行を隠す、厚紙などを切って一行だけ見えるようにするシートを使う)。
- 音声教材やイラストの多いテキストなど、特性に合わせたものを使用する。
- ゆっくり読ませる。
- 指などで一文字一文字を追いながら、読ませる。
- 文字と音の正確な関連を教える。
- 文の区切りを、1マスあけたり、「/」を入れたりして示した文で学ぶ。
《書くのが苦手な人への対処法》
- 大きなマス目や広い罫線のノート、紙を使う。
- 間隔をあけて書く。
- ゆっくりていねいに書く
- なぞり書きさせる、文字をパーツに分けて示す。
- 点結び、線結びの練習をする。
- 板書を写真に撮る、音声を自動で文字起こしするなど、ICTを有効活用する。
- 漢字の覚え方を工夫する(書き順を音声化する、イラストなどのイメージにする、へんとつくりを別々にしたカードを作成し組み合わせる)
- 文章を書く際は、まずは頭の中にあるものを単語レベルで書き出してみる
- 模範的な文章を書き写す
- パターン化した文章を数多く書く
- 下書きを手伝う
《計算するのが苦手な人への対処法》
- ゆっくり落ち着いて計算させる
- 数字や記号は大きく印字する
- 日々の生活の中で数に親しませる(お風呂で数を数える、おやつの数を数える)
- ブロックやおはじきで数の概念を理解する
- マス目のあるノートを使う
- 九九は、表を見ながら覚える
- パソコンのCGソフトなどを活用し、立体をリアルに再現する
- 積み木などで立体をつくる
- 数式の横に、文章でやり方などの説明を補足する
- 長い文章問題は分解し、区切りごとに「ここまでは分かった?」と理解度を確認する
- 問題文の内容をわかりやすく説明する
- 少数は数直線を使用して理解させる
- 分数はピザを切り分けるところから理解させる
《共通の対処法》
- スマートフォンやタブレット(デジタル教科書、アプリなど)を積極的に取り入れる。
- 動画、漫画、図鑑などを有効活用する。
- 体を動かし、体験しながら覚える
- 一度に何問も解かせるのではなく、理解して正解出来たら休憩あるいは終了し、それを日々繰り返す。
- できないことを叱るのではなく、一緒に考える。
- 他の子どもと比較しない。
- 落ち着いた雰囲気、環境を心がける
なお、LD全般にかかわる指導の原則として、次の3つを確認しておきたい。
- 指導内容を細分化する
- 具体的な教材を使用する
- 子どものペースに合わせて繰り返し指導する