特別支援の不思議な世界

高校教師だった私が特別支援学校勤務をきっかけに知ったこと考えたこと

人工授精と自閉症スペクトラム障害

 自閉症スペクトラム障害ASD)のは、現在、脳機能の障害であるとされ、有効な治療薬はないとされている。脳機能に障害があるのは、遺伝的要因、親の高年齢、母親の疾患、妊娠中の服薬、妊娠・出産時のアクシデント、不妊治療などさまざまな原因が考えられる。家族内の発症率が高いことから、遺伝的要因が大きいことは確かであろうが、杉山登志郎氏はさまざまな原因に言及した上で、不妊治療に紙数をさいて勇気のある説明を展開している。

現在、人工授精など生殖医療はどんどん進んできている。子供を望む夫婦の気持ちを慮ってか、生殖医療に対する積極的批判はほとんど見当たらないが、不妊が生じるにはそれなりの理由があり、そこを強引に妊娠させる過程においてある程度のリスクが上がることは当然である。( 中略 )実は生殖医療において発達障害も生じやすいし、また意外なことに、子ども虐待のリスクが高まるのである。

 2016年の統計では、総出生数97万6978人に対して人工授精で生まれた子どもは5万4110人であり、18人に1人が人工授精で生まれたことになる。ASDをはじめとする発達障害が増加傾向であることを考えると傾聴すべき説明ではなかろうか。

 

杉山登志郎発達障害の子どもたち』講談社現代新書2007

岩波明発達障害』文春新書2017

岩波明『誤解だらけの発達障害』2019