特別支援の不思議な世界

高校教師だった私が特別支援学校勤務をきっかけに知ったこと考えたこと

オキシトシンと自閉症スペクトラム障害

  自閉症スペクトラム障害ASD)との関連でオキシトシンという脳のホルモンが注目されている。NHKの「ガッテン」でも取り上げていたが、オキシトシンは「ハッピー・ホルモン」ともいわれ、他者への信頼や愛着、社会性の形成に大きく関連することがわかっいてるのだそうだ。NHKの番組では、他者を抱きしめたり、さすったり、また母親などの近親者の声を聞くことで分泌が増加し、精神的に安定したり、認知症が改善したり、リウマチの痛みが軽減したりする様子が放映されていた。オキシトシンはもともと、乳汁分泌や子宮収縮を促すホルモンだが、健常成人へのオキシトシンの投与で、相手の目に向けた視線の増加、他者への感情認知の改善、顔貌記憶の向上、相手への信頼感の増幅などが高まることが確認されている。

 ところで、自閉症スペクトラム障害ASD)においては、オキシトシン血中濃度が低下していたり、オキシトシン代謝が変化している可能性が指摘されている。オキシトシンの分泌が足りないことが原因の一つだということだ。実際、ASDオキシトシンを連続投与したところ、常同行動が減少したり、社会性の障害の改善がみられたりしたという報告があり、今後治療薬として期待されるところである。

 

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