特別支援の不思議な世界

高校教師だった私が特別支援学校勤務をきっかけに知ったこと考えたこと

男性ホルモンとASD

 自閉症スペクトラム障害ASD)の有病率には男女差があり、男性が圧倒的に多いのだという。アメリカ疾病対策および予防センターのASD調査では、8歳児1000人のうち、男26.6人、女6.6人とかなりの差がみられた。

 ASDの男女差については,ASDの根底には極端な男性脳があるのではないかという仮説がある。健常者の場合、男性は女性に比べて共感性や友好性が低い一方、理論的な推論や理解力が高いといわれるが、知的障害のないASDをもつ人は、健常男性に比べてさらに高い論理的思考力をもつ一方、共感性や社会性が低下しているのだという。

 同一性へのこだわり、社会性・コミュニケーションの障害を特色とするASDは、男性的な様態であるといえる。実際、ASDをもつ人はもたない人に比べて、男女ともにテストステロンやアンドロゲンなどの男性ホルモンの値が高いことが報告されており、これらによって脳が極端に男性化しているのではないかと考えることができる。注目すべき仮説である。

 

岩波明『誤解だらけの発達障害』宝島社新書2019