自閉症スペクトラム障害(ASD)と統合失調症の類似性が指摘されている。ASDと統合失調症を見分けることは非常に難しく、ASDの概念が浸透していない過去の時代においては、ASDが統合失調症と誤診されたことも多かったらしい。また、ASDの2~3%の割合で、両者が併存している可能性もあるという。
統合失調症はかつて精神分裂病と呼ばれた、考えや気持ちがまとまらない状態が続く精神疾患である。幻聴や被害妄想、思考障害、無為自閉や感情鈍麻などの症状がみられ、急性期には幻覚、妄想などの病的体験が活発化する。興奮状態となったり、独語や空笑(一人でニヤニヤ笑うこと)したりすることもあるという。発症後は慢性化したり進行したりして精神機能が低下した状態となり、感情が鈍磨して共感性に乏しくなる。しだいに、社会活動から撤退して無為自閉な生活を送るようになることが多いという。
一方、ASDにおいても、自閉的な世界に没頭して独語や空笑がみられたり、二次障害として心理的な負荷がかかると幻聴や妄想を伴うことがあるのだという。
両者の見分け方は、難しい。ASDの症状は幼少期からみられ、その特性は基本的には変わらないのに対して、統合失調症はある時を境に症状が現れ、経過の中で「人格水準の低下」が起こる。病前の状態まで回復することはほとんどないという。妄想や幻聴についても、統合失調症では支離滅裂でほとんど理解することが困難なのに対して、ASDにおいては興味やこだわりに関連したある程度理解可能なものが多いという。対人関係についても、統合失調症では外部の世界に対する不安や恐怖感が中心であるのに対し、ASDにおいては周囲の意向を気にしない、あるいは考えようとしないことにその特徴があるようだ。