特別支援の不思議な世界

高校教師だった私が特別支援学校勤務をきっかけに知ったこと考えたこと

ASDの「自閉」について

 臨床の場面においては、自閉症スペクトラム障害ASD)の特徴である「自閉」、すなわち「社会性、コミュニケーションの障害」が鑑別点にはならないことが多いという。ADHDと区別することが難しいのだそうだ。

 ADHDの人はもともと対人関係は良好なことが多いが、その特性ゆえに社会生活の中で失敗を繰り返し、次第に他者と関わることに不安を感じて孤立するケースが多いのだそうだ。一方、ASDの人といえば内向的なイメージがあるが、逆になれなれしく思われることがある。他者への配慮が薄く、他者との距離感がわからないために、必要以上になれなれしく接してしまうのだという。

 ASDの人は「社会性、コミュニケーションの障害」という特性があるといわれるが、集団の中に入れないわけではない。彼らは集団の中にいるにも関わらず、他者を無視して奇声をあげたり、一人で跳ねまわったりして、他者と感情的につながることができないのだ。他者など関係ないのだ。他者と一緒にいても、他者の存在を実感できず、その気持ちを察することができない。それこそがASDにおける「自閉」の本質なのだ。

 このような理由から、臨床の場では、「同一性へのこだわり」、すなわち「常同性」がASDADHDを区別する重要なポイントとなるらしい。

 

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