特別支援の不思議な世界

高校教師だった私が特別支援学校勤務をきっかけに知ったこと考えたこと

ADHDと治療薬について

  ASDの原因が脳機能の障害とされるのに対して、ADHDの原因は脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンドーパミンが適切に働かないことだとされる。それらの脳内神経伝達物質がうまく働かないことで、集中力、注意力のコントロールがしにくくなっているとする説が有力である。母親の喫煙、早期産、低出生体重などにより、それらの神経伝達物質が機能低下しているというのだ。

 したがって、ADHDには薬物療法が有効である。薬物によって、ノルアドレナリンドーパミンの濃度をあげて、不注意や衝動性、多動の症状を緩和するのである。薬物療法に用いられる薬は、メチルフェニデートコンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)の3種類である。メチルフェニデートコンサータ)は、中枢刺激薬であり、脳内の伝達物質ドーパミンノルアドレナリンの濃度を上昇させる働きがある。アトモキセチン(ストラテラ)とグアンファシン(インチュニブ)は非中枢刺激薬であり、ノルアドレナリンの濃度を上昇させる働きがある。

 メチルフェニデートについては、かつて同じ成分のリタリンという薬の乱用が問題となった。リタリンは薬物の血中濃度が急速に上昇するという特徴があり、これが乱用・依存と関係していると考えられ、日本では処方適用外となった。コンサータでは成分が少しずつ放出される仕組みがとられており、依存や乱用のケースはほとんど発生していない。

 

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岩波明『うつと発達障害』青春新書2019

杉山登志郎発達障害の子どもたち』講談社現代新書2007