ASDの原因が脳機能の障害とされるのに対して、ADHDの原因は脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンとドーパミンが適切に働かないことだとされる。それらの脳内神経伝達物質がうまく働かないことで、集中力、注意力のコントロールがしにくくなっているとする説が有力である。母親の喫煙、早期産、低出生体重などにより、それらの神経伝達物質が機能低下しているというのだ。
したがって、ADHDには薬物療法が有効である。薬物によって、ノルアドレナリンとドーパミンの濃度をあげて、不注意や衝動性、多動の症状を緩和するのである。薬物療法に用いられる薬は、メチルフェニデート(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)の3種類である。メチルフェニデート(コンサータ)は、中枢刺激薬であり、脳内の伝達物質ドーパミンとノルアドレナリンの濃度を上昇させる働きがある。アトモキセチン(ストラテラ)とグアンファシン(インチュニブ)は非中枢刺激薬であり、ノルアドレナリンの濃度を上昇させる働きがある。
メチルフェニデートについては、かつて同じ成分のリタリンという薬の乱用が問題となった。リタリンは薬物の血中濃度が急速に上昇するという特徴があり、これが乱用・依存と関係していると考えられ、日本では処方適用外となった。コンサータでは成分が少しずつ放出される仕組みがとられており、依存や乱用のケースはほとんど発生していない。